さてさて前置き?が長くなりました。 白石一郎には、九州、大分県、竹田市を素材にした小説があり、今回それらを記します。
先ずは『天上の露』、これは短編集で、このなかに「鬼姫」があります。 これは、熊本で政府軍に敗れ人吉へ撤退した西郷軍が、とつぜん大分県へ姿を見せ、旧岡藩の城下町竹田を占領、九重山麓の村でその敗走軍の中の西郷隆盛の息子の名を騙る隊士との恋に破れて殺害、自殺する村の薄幸娘を12歳の庄屋の子どもの眼で見つめた話です。
次は『蒙古の槍』、これも短編集で、表題作は、元寇後の肥前鷹島の物語。 この短編のなかの「巨船」は九州以外ですが、答志島(三重県鳥羽市)の話、これは『戦鬼たちの海』(織田水軍の将・九鬼嘉隆)につながる内容ですので記しました。
同じく短編集『島原大変』、表題作は1792年(寛政四年)の雲仙岳大爆発を扱ったもの、被害は地元島原だけではなく、対岸の熊本にもおよんだため、人々は、「島原大変肥後迷惑」と呼んで、後世に語り伝えたと解説にあります。
30年前に発生した大規模火砕流では多くの方が亡くなりました。 数年前、「がまだすドーム」(雲仙岳災害記念館)を訪れ、火砕流の様子を(映像・音響・振動で)体験したのですが、そのことは忘れない記憶として残っています。
この短編集の中の「ひとうま譚」、豊後岡藩の領地は直入、大野両郡にまたがり、領内の村々は67組に分けられ、組ごとに大庄屋が置かれてあった。 そのひとつ直入郡有氏(ありゅうじ)村(現竹田市久住町大字有氏)の大庄屋竹下家の嫁お季と、人馬(ヒトウマ)を担ぐ軍蔵の物語です。
ヒトウマとは道具の名称でもあり、その道具を担ぐ軍蔵のことだとお季は思うのです。
コメント