隆慶一郎 その3

この作品も残念ながら未完ですが、解説を読むと、雄大な構想があったことが分かります。 だから見知らぬ海へのタイトルだったのでしょうね。 文中に、「・・・明国相手に八幡(ばはん)をするか、シャム、ルソン相手の交易でもしていた方がいい」との記載があります。

八幡とは、《倭寇(わこう)が船旗に書いた八幡あるいは八幡大菩薩の神号を、「ばはん」と読んだところから生じた称ともいう》 ①倭寇の異称。 ② 戦国時代、外国に対する海賊行為のこと。 ③江戸時代、国禁を犯して外国へ渡ったり通商貿易をしたりしたこと。抜け荷買い。 ④ 「八幡船(ばはんせん)」の略。 とあります。
〔ルビが無ければとても読めませんね〕

この八幡の記載のあるページに、石田三成の審問に対する返答があり、このセリフには思わず快哉を叫ぶ(胸のすく)気持ちになりました。

彼の作品にはスーパーヒーローが出てきて、史実を綿密に押さえながらも、エンタメの要素がかなり大きく、楽しく読むことができます。 (このような小説を読むと、海洋時代小説の第一人者として知られる白石一郎の全作品も読んでみたくなります。)

今、短編集を読んでいます。 短編全集1、全8編、これには柳生一族=柳生石舟斎宗厳、但馬守宗矩、厳勝、飛騨守宗冬、十兵衛三厳、兵庫助利厳・・・が、徳川秀忠、家光に絡めて短編で書かれており、短編をつなげてひとつの流れになっています。 随所に柳生新陰流のチャンバラがでてきます。

短編全集2、全8編、裏表紙には、「男社会の裏側を生きる女たちの意地と、この世の無常、そして男たちの執念を描き出した圧巻の筆さばき。」とあります。
ここにも隆慶一郎独特の作風が溢れています。

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